店舗運営
飲食店は6店舗まで社長がSVをやるべき?多店舗展開で経営者が現場から離れるタイミング
QSC Checker編集部
飲食店が1店舗から2店舗、3店舗と増えてくると、経営者の仕事は少しずつ変わっていきます。
1店舗のときは、自分が店長として店舗を良くすれば会社も良くなります。
しかし2店舗になると、自分がいない店舗が生まれます。
3店舗、4店舗と増えれば、すべての店舗に毎日いることはできません。
ここで経営者が考えなければならないのが、
「自分はいつ現場から離れるべきなのか?」
という問題です。
私たちは、少なくとも6店舗程度までは、経営者自身がSV(スーパーバイザー)・エリアマネージャーの役割を経験した方がいいと考えています。
もちろん、業態や店舗規模、組織によって正解は異なります。
しかし、2〜3店舗になった段階で経営者が店舗運営から完全に離れてしまうことには、大きなリスクがあります。
2店舗になった瞬間から「店長とは違う仕事」が始まる
1店舗しかないとき、経営者自身が優秀な店長であれば店舗を良くできます。
ところが2店舗になると状況が変わります。
自分がいる店舗は良い。
しかし、自分がいない店舗でも同じ状態を作らなければなりません。
ここで初めて、
「自分ができる」から「他人にやってもらう」
という仕事が始まります。
これは店長業とはまったく違います。
例えば、自分なら汚れている場所を見つけたら掃除すれば終わります。
料理の盛り付けが悪ければ、自分で直せます。
スタッフの接客が悪ければ、自分で接客することもできます。
しかしSVは、それをしてはいけません。
店長自身が店舗を良くできる状態を作らなければならないからです。
これが多店舗経営の最初の壁です。
2店舗なら「1店舗の店長+もう1店舗のSV」でもいい
2店舗になったからといって、すぐに社長が事務所へ移る必要はないと思います。
むしろ2店舗程度なら、
1店舗では自分が店長をしながら、もう1店舗に対してSVの役割を担う。
このくらいでもいいでしょう。
ここで重要なのは、2店舗目を単に「店長に任せる」のではなく、
任せた店舗をどう管理するのかを経営者自身が経験することです。
QSCを確認する。
数字を見る。
店長と話す。
問題を発見する。
改善方法を考える。
改善タスクを決める。
次回訪問で改善されたか確認する。
この経験が、将来の多店舗経営の土台になります。
3〜6店舗は社長がSVを経験する絶好の時期
3店舗を超えてくると、自分がすべての店舗で店長をすることはできなくなります。
だからこそ、この時期は経営者自身がSVとして店舗を管理する経験を積む絶好のタイミングです。
例えば、
店舗で仕事をする時間と、複数店舗を巡回・管理する時間を分ける
という方法があります。
必ずしも社長が毎日店舗に立つ必要はありません。
むしろ重要なのは、
複数店舗を同じ基準で見る経験を積むこと
です。
繁盛店を見る。
問題店舗を見る。
優秀な店長を見る。
まだ成長途中の店長を見る。
同じブランドなのに、なぜ店舗によって結果が違うのかを考える。
この経験によって、経営者自身の中に「良い店舗とは何か」という基準ができます。
なぜ社長自身がSVを経験する必要があるのか
大きな理由があります。
自分がやったことのない仕事は、なかなか人に教えられないからです。
会社がさらに大きくなれば、当然、社長自身がすべての店舗を巡回することはできなくなります。
そこでSVやエリアマネージャーを採用・育成することになります。
しかし社長自身がSVを経験していなければ、
「良いSVとは何をする人なのか」
を具体的に説明することが難しくなります。
「店舗を良くしてくれ」
「店長を育ててくれ」
「QSCを上げてくれ」
だけでは、SVも何をすればいいのか分かりません。
SVは意外と経験する機会が少ない仕事
SVという仕事は少し特殊です。
飲食店で働けば、スタッフ業務は経験できます。
経験を積めば店長になる機会もあります。
しかしSVは、会社がある程度多店舗化しなければ存在しない仕事です。
さらにポジション自体が少ないため、店長経験者の誰もがSVを経験できるわけではありません。
しかも、
優秀な店長=優秀なSV
とも限りません。
店長は自分の店舗を良くする仕事です。
SVは他人が運営する店舗を良くする仕事です。
似ているようで、必要な能力はかなり違います。
優秀な店長ほどSVになって苦戦することもある
優秀な店長は、自分で問題を見つけ、自分で解決できます。
だから店舗では非常に強い存在です。
しかしSVになると、それだけでは足りません。
問題を見つけても、自分で直して帰るわけにはいきません。
店長に問題を理解してもらい、
「店長自身が改善できる状態」
を作る必要があります。
ここでは、
コミュニケーション能力、問題分析、教育、適切な距離感、改善タスクの設定など、店長とは違う能力が必要になります。
だからSVは、店長の延長線上にあるようで、実はかなり特殊な仕事です。
社長が早く現場から離れすぎると何が起こるのか
2〜3店舗になった頃は、会社が少し大きくなった感覚が出てきます。
すると経営者自身も、
「そろそろ経営に専念しよう」
と考えることがあります。
もちろん、資金調達、採用、物件開発、商品開発など、経営者にしかできない仕事もあります。
しかし、この段階で店舗運営から完全に離れてしまうと、
店舗を増やす能力はあるのに、増えた店舗を管理する能力が会社に蓄積されない
という状態になることがあります。
1号店は良かった。
2号店もなんとか成功した。
ところが4号店、5号店あたりからQSCが崩れ始める。
店長によって店舗の状態が違う。
クレームが増える。
採用しても定着しない。
数字の悪い店舗が出てくる。
それでも会社は次の出店を進める。
多店舗展開では、この状態が非常に危険です。
出店能力より先に「店舗を管理する能力」を作る
飲食企業を大きくするには、物件を見つけて店舗を出す能力も必要です。
しかし、
店舗を出す能力と、店舗を増やしても品質を維持する能力は別物です。
5店舗作れることと、5店舗を良い状態に保てることは違います。
だから店舗数がまだ少ない段階では、経営者自身が、
「自分がいなくても良い店舗を作る方法」
を学ぶ必要があります。
そのための仕事がSVです。
6店舗程度までは「社長兼SV」でもいい
店舗数によって一律に決めることはできませんが、一つの目安として私たちは次のように考えています。
店舗数 | 経営者の店舗運営における役割の目安 |
|---|---|
1店舗 | 社長自身が店長を経験する |
2店舗 | 1店舗を見ながら、もう1店舗のSVを経験する |
3〜6店舗 | 店舗にも関わりながら、複数店舗のSV業務を経験する |
それ以上 | SVを育成し、徐々に店舗管理を委譲する |
これは「6店舗までは絶対に社長が店に立つべき」という意味ではありません。
重要なのは店舗数ではなく、
店舗管理の仕組みとSVを育成できる能力が会社にできる前に、社長が店舗運営から離れないこと
です。
社長業に専念するのは組織が必要としてからでも遅くない
会社が成長すれば、いずれ社長にしかできない仕事は増えていきます。
事業戦略。
資本政策。
組織設計。
大型採用。
新規事業。
出店戦略。
金融機関や投資家との交渉。
一定規模を超えれば、社長が一店舗の改善に何時間も使うことの方が、会社全体として非効率になる時期が来ます。
その段階では、社長はSVから離れるべきでしょう。
しかし重要なのは、
「社長だから現場を離れる」のではなく、「社長がやらなくても店舗が改善される組織ができたから離れる」
という順番です。
肩書きが社長になった瞬間から、経営企画だけをする必要はありません。
会社の規模によって、社長の仕事そのものが変わっていきます。
社長自身がSVをやると「SVに何を求めるか」が明確になる
社長自身がSVを経験すると、将来SVを採用したときに見るべきポイントも変わります。
「店舗を何店舗回ったか」
「店長と何回面談したか」
だけではなく、
担当店舗のQSCが改善したか。
店長が成長したか。
前回×だった設問が○になったか。
適切な改善タスクを設定できたか。
といった、本当の成果を見ることができます。
自分自身が経験しているからこそ、
SVが仕事をしているように見える状態と、本当に店舗を改善している状態の違い
も分かるようになります。
QSCは社長がSVを学ぶための共通言語にもなる
感覚だけで店舗を巡回すると、経営者ほど指摘事項が増えやすくなります。
経験があるからこそ、細かな問題まで見えるからです。
しかし、すべてを店長へ伝えればいいわけではありません。
会社として重要なQSCを設問として定義し、
調査 → 課題発見 → 改善タスク → 実行 → 次回調査
というサイクルを回します。
すると社長自身も、
「自分が気になったこと」
と
「会社として本当に改善すべきこと」
を分けて考えられるようになります。
これは、将来SVへ店舗管理を引き継ぐときにも重要です。
社長の頭の中にしかなかった「良い店舗の基準」を、組織の共通言語に変えられるからです。
QSC Checkerで店舗管理を仕組みにする
QSC Checker(QSCチェッカー)は、飲食店や小売店などの店舗チェックから改善までをクラウドで管理するQSC管理サービスです。
QSCの設問を設定し、スマートフォンなどから店舗をチェック。
問題があった項目について改善タスクを設定し、改善報告まで記録できます。
店舗数が増えても同じ基準で店舗を見ることができるため、
社長自身が持っている「良い店舗の基準」を、SVや店長へ引き継いでいく仕組み
としても活用できます。
1店舗月額3,000円(税別)、登録から30日間無料で利用できます。
まとめ|社長が現場を離れる基準は「店舗数」だけではない
会社を大きくするなら、いつか社長は店舗運営から離れなければなりません。
しかし、早く離れることが成長ではありません。
1店舗では、自分で良い店舗を作る。
2店舗になったら、自分がいない店舗を良くする方法を学ぶ。
3〜6店舗では、複数の店長を通じて店舗を改善する方法を学ぶ。
そして、
自分の代わりに店舗を改善できるSVを育てる。
その後に、経営者はさらに大きな仕事へ時間を移していけばいいのではないでしょうか。
多店舗経営で重要なのは、
「自分が店舗を良くできること」ではありません。
「自分がいなくても店舗が良くなる組織を作れること」です。
その仕組みを作るためにも、社長自身が一度はSV・エリアマネージャーという仕事を経験しておくことには、大きな意味があります。
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